股関節は体の中でも最も大きな力が加わる関節です。立つ、座る、歩く、走る、といった日常動作を支えており、運動をしなくても、とても大きな負荷が日々かかっています。
また、筋力の低下や肥満、運動による「使いすぎ」や、逆に長時間同じ姿勢で過ごすことによる「使わなさすぎ」によっても、違和感や不具合は起きてしまいます。
つまり、体のあらゆる動作や習慣が股関節に影響を与えているので年齢を重ねれば重ねるほど、股関節に問題が起きるリスクは高まっていきます。
股関節の寿命(耐久年数)70~80年と言われていますが、50代や60代、なかには30代でも股関節にトラブルを抱えている方は大勢います。
「歩き始めにズキッとする」「ランニング後に股関節が重だるい」「片側だけが慢性的に痛む」股関節の痛みには、年齢・性別・生活習慣・運動量などによって多様な原因があります。
この記事では、股関節の仕組みから痛みが起こるメカニズムをわかりやすく解説し、病気/生活習慣・加齢/運動・外傷の観点で主な原因を紹介します。さらに症状が出るタイミングや部位から考えられる要因をチェックできるようにしました。放置してはいけないサインと受診の目安もまとめていますので参考にしてみてください。
Contents
股関節の痛みの原因を理解する

股関節は「骨盤の臼(寛骨臼)」に「大腿骨頭(丸い骨)」がはまる球関節で、広い可動域と体重支持の両方を担います。
日常の立つ・歩く・座る・階段昇降にくわえ、走る/ひねる/片脚で支えるといった動作で関節軟骨・関節包・周囲筋(中殿筋・腸腰筋・ハムストリングス等)・腱・靭帯・滑液包に負担が集中します。
股関節の仕組みと負担がかかりやすい理由、痛みが起こるメカニズム
・機械的ストレス:体重+繰り返し動作→軟骨や腱に微小損傷
・炎症:摩耗・炎症性疾患→関節内や周辺組織が腫れる
・アライメント不良:骨盤の傾き、筋のアンバランス→一点集中負荷
・循環・栄養低下:加齢・代謝低下→組織修復力の低下
同じ股関節の痛みでも、部位(前・外側・臀部・鼠径部)やタイミング(起床時・歩き出し・夜間・運動後)で原因が変わります。具体的に紹介していきましょう。
【病気編】股関節痛の主な原因
股関節の痛みには、日常生活での負担や加齢だけでなく、病気が関わっている場合もあります。原因となる病気を知ることで、適切な対処や早めの受診につながります。
ここでは、股関節痛となりやすい病気をご紹介していきます。
変形性股関節症(中高年に多い)
特徴:鼠径部(足の付け根)の痛み、可動域の制限、立ち上がり・歩き始めで痛い
背景:軟骨の摩耗・骨の変形。先天性股関節脱臼や寛骨臼形成不全の既往があるとリスク上昇
ケア:体重管理、関節に優しい運動(自転車・水中)、可動域エクササイズが基本
関節リウマチ・関節炎
特徴:朝のこわばり、複数関節の腫れ・痛み、安静時痛
背景:自己免疫性の炎症。股関節を含め全身の関節に及ぶことがある
ケア:医療機関での血液検査・画像検査と薬物治療が中心。自己判断で運動量を増やしすぎないことが大切です。
大腿骨頭壊死症
特徴:安静時も強い痛み、可動域低下。進行で関節破壊
背景:骨頭への血流障害。ステロイド使用や大量飲酒などが危険因子する
ケア:早期の専門医受診が必須です。
坐骨神経痛による関連痛
特徴:臀部~太もも後面に放散、しびれ・灼熱感、前屈や長時間座位で悪化
背景:腰椎椎間板障害、梨状筋症候群など
ケア:腰部評価とストレッチ、神経滑走。股関節自体の病気と鑑別が重要です。
【生活習慣・加齢編】 股関節痛の原因
股関節の痛みは、病気だけでなく日々の生活習慣や加齢による変化から生じることも少なくありません。姿勢の癖や運動不足、体重の増加など、普段の積み重ねが股関節に負担をかけてしまいます。
姿勢の悪さ・骨盤の歪み
・長時間座位、片脚立ち癖、反り腰・猫背で負荷が一点集中
・中殿筋や腸腰筋の機能低下で骨盤が不安定→歩行時の痛みへ
筋肉の衰えや柔軟性の低下
・加齢や不活動で支持筋(中殿筋、深層外旋六筋)が弱る
・ハム・腸腰筋の短縮で可動域が狭く、摩擦が増える
更年期・ホルモンバランスの影響
・エストロゲン低下で筋量・骨密度・靭帯の弾力が低下
・血行や睡眠の質低下も修復力の妨げに
【運動・外傷編】股関節痛の原因
スポーツや日常の動作での負荷、転倒やけがなどによっても股関節に痛みが生じることがあります。特に無理な運動や繰り返しの動作は、関節や周囲の筋肉・靱帯に大きなストレスを与えます。ここでは、運動や外傷に関連する股関節痛の主な原因を取り上げます。
スポーツによるオーバーユース
・ランニング、サッカー、バレエなどで腱・滑液包の炎症(腸腰筋腱炎、中殿筋腱障害、転子部痛)
・走行距離やフォーム、シューズの影響
怪我や捻挫・打撲による痛み
・転倒・接触による軟部損傷/骨折(とくに高齢者)
・早期評価と負荷の段階的復帰が鍵
筋肉・靭帯の炎症
・過伸張・瞬発動作での微細損傷
・局所の熱感・圧痛・可動時痛が目安
【症状別】に考えられる股関節痛の原因
股関節の痛みは、出る場所や動作のタイミングによって原因が異なることがあります。
「歩くときに痛い」「座っているときに違和感がある」など、症状の出方を手がかりにすると、原因の目安をつけやすくなります。ここでは、症状ごとに考えられる股関節痛の原因について解説します。
片側だけ股関節が痛む場合
・変形性股関節症の初期、中殿筋腱障害、骨盤の左右差、フォーム不良(片脚荷重)
・チェック:鏡の前で片脚立ち→骨盤が傾く/体幹が横に流れるなら中殿筋弱化の可能性
夜間や就寝中に痛む場合
・炎症の強い時期、関節炎、大腿骨頭壊死の可能性
・注意:夜間痛+可動域低下が強い場合は、医療機関の受診をおすすめします。
歩く・立つ・座るときに痛む場合
・歩行時の鼠径部痛→関節内が要因の可能性
・立位・階段での外側痛→中殿筋腱・滑液包が要因の可能性
・長時間座位での臀部痛→坐骨神経痛や梨状筋が要因の可能性
ランニング後に股関節が痛む場合
・距離・路面・フォーム急変、シューズ寿命、股関節外転筋の筋持久力不足
・チェック:シューズの片減りなど
股関節痛を放置してはいけない症状
股関節痛は、原因のおおよその見当がついたからといって放置してよいものではありません。中には、しっかりと原因を特定し、医療機関での治療が必要となるケースもあります。
下記の症状に当てはまる場合は、無理をせず、速やかに医療機関を受診しましょう。
・夜間痛・安静時痛が続く/痛みで目が覚める
・発熱や腫れ、赤み、熱感を伴う
・可動域が急に狭くなった、歩行が困難
・外傷後に強い痛み・体重支持不可下
・しびれ・脱力など神経症状を伴う
これらは感染・骨折・壊死・高度炎症などの可能性があります。
まとめ
股関節の痛みは、関節そのものの病気に加え、姿勢や筋力低下・更年期変化、スポーツのやり過ぎやフォーム不良といった要因が複合して起こります。痛みの場所や出るタイミングを手がかりに、原因の見当をつけましょう。
また、夜間痛や発熱、外傷後の強い痛み、歩けないなどのサインは放置せず受診が必要です。
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