「腰が痛い」と感じるとき、実は原因が腰そのものではなく股関節の硬さにあることが少なくありません。
股関節は体の土台ともいえる関節であり、その動きが制限されると腰が代償的に働き、負担が集中してしまいます。
本記事では、理学療法士の視点から股関節の硬さと腰痛の関係を解説し、改善に役立つストレッチやマッサージ方法を紹介します。
Contents
股関節と腰が同時に痛む原因
股関節と腰は体の中心で連動して動くため、どちらかに不調があると同時に痛みが出やすい部位です。関節や筋肉の疲労、姿勢の乱れ、病気など、複数の要因が関係していることがあります。
原因1:股関節の可動域制限(ROM制限)が腰に影響を与える
股関節は「屈曲・伸展(前後)」「外転・内転(左右)」「回旋(内回し・外回し)」など多方向に動くことで、歩行・しゃがみ・ねじりなどの日常動作を支えている関節です。
正常な可動域があれば、これらの動きを股関節で処理できます。
しかし、股関節が硬かったり可動域が狭かったりすると、その動きの一部を腰椎(腰の骨)や骨盤で代償することになります。
例えば、股関節外旋が制限されていれば、歩くとき・回るときなどに骨盤や腰椎が過度に回旋したり、腰を捻ったりする動きが増え、過剰な捻れストレスや椎間関節・椎間板・棘間靭帯などに負荷がかかります。
また、股関節屈曲制限があると、前かがみ/しゃがみ/階段などで腰を曲げる動きで無理が生じ、腰椎が過度に伸展・制御不能な動きをしてしまい、筋肉・靭帯・関節に微小損傷を繰り返すことがあります。
原因2:姿勢の崩れと骨盤のゆがみ(骨盤アライメントの異常)
骨盤は腰と股関節の間にあり、「骨盤傾斜(前傾/後傾)」「左右の傾き(側屈)」「回旋(ひねり)」などのアライメントの変化が起きると、腰椎の負荷パターンが変わります。
例えば、骨盤前傾が強いと腰椎の前側のくぼみが過度になり、椎間関節後方部や棘間部、椎間板後部にストレスが集中します。
また、左右差(例えば骨盤が片側だけ上がっている/筋肉の引き具合が違うなど)やねじれがあると、左右非対称な荷重(左右の筋肉・靭帯へのストレス)を生じ、腰椎・仙腸関節・股関節にアンバランスな負担がかかります。
原因3:筋肉のアンバランス(不均衡な筋力・筋の硬さ)
股関節周囲(例えば大殿筋、中殿筋、股関節屈筋群、内転筋・外転筋など)が適切に機能しないと、身体を支える力が弱まったり、動作時のコントロールが低下します。
これにより腰の筋肉(脊柱起立筋、腰方形筋、腹筋群など)が過剰に働き、疲労や過剰負荷・こりを生じやすくなります。
たとえば、股関節伸展筋(臀部)が弱いと、歩く・立つなどで股関節を使って伸ばす動作の代わりに腰の伸展が強く入る。これが慢性的なストレスを腰部構造にかけます。
また、股関節屈筋(腸腰筋など)が硬いと、骨盤の前傾を維持しやすくなり、腰椎前彎の過度な状態を助長します。腰椎関節後部構造(椎間関節・棘突起・椎間板後縁など)に圧迫や摩耗ストレスがかかるようになります。
- 代償の原理:股関節が使えない分、腰と骨盤でその動きを「しのごうとする」ため、通常使われない筋肉や関節が過剰に動いたり接触したりする。これが疲労・炎症・痛みを引き起こします。
- 関節・軟部組織へのストレスの累積:小さなズレや硬さでも、日常生活・動作を繰り返すことで負荷が累積し、椎間板・椎間関節・筋膜などに傷害が起こる可能性があります。
- 姿勢と動作の連鎖性:股関節/骨盤/腰椎は一つの連動体。一部が制限されると、その上/下/反対側にも影響が及びます。
股関節と腰が同時に痛むときの症状
股関節と腰の痛みが同時に起こると、歩行時の違和感や長時間の立位・座位での痛み、可動域の制限などが見られます。以下の症状は、その原因によるものと考えられます。
・腰を反らすと痛みが強くなる
・長時間座ったあとに立ち上がると腰や股関節が痛む
・歩行時に腰が重く感じる
・足を広げたりしゃがんだりする動作がつらい
【動画つき】股関節と腰の痛みを和らげるエクササイズ
腰椎での代償動作を出さないために、まずは股関節単独での動きをしっかり引き出すことが重要です。同じ動作でも、股関節主導で動作を行うよう意識しましょう。
お尻の後ろや腰の下にだるさや痺れがある方は、下記の運動を行ってみてください。
ガッセキ
- 足の裏を合わせて座ります。
- 両足を向かい合わせに力を加えて、骨盤を立てます。
- 前後左右に体重移動します。
股関節リセットエクササイズ
- 片足は外旋し開き、片足は内旋します。
- 後ろになっている側の股関節を内旋しながら、骨盤を起こしていきます。
- 股関節内旋―骨盤前傾、股関節外旋―骨盤後傾を繰り返します。
リザードストレッチ
- 前足を立てて、下腿を垂直にします。
- 上体を下に下ろしていきます。
- 上体を落としていく際に、前足の膝が内側に入らないように注意しましょう。
- ゆっくり息を吐きながら、10回ずつ行いましょう。
股関節クロスストレッチ
- 仰向けに寝て、股関節をクロスします。
- ゆっくり息を吐きながらお尻の伸張感が出てくればいい感じです。
- 10秒キープで5セットずつ行いましょう。伸張感が強い側は少し多めに行いましょう。
四つ這いヒップヒンジ
- 四つ這いになって、股関節を斜め後ろに引いていきます。
- 腰を捻ってしまうと、ちゃんと臀部が伸びないので、股関節にまっすぐ体重を乗せていきましょう。
- ゆっくり左右交互に10~20回ずつ行いましょう。硬く感じる側は、少し止めたり、連続で行うなど入念に行いましょう。
まとめ
股関節が硬いと、その代償として腰に負担が集中し、慢性的な腰痛につながります。
原因は股関節の可動域制限・姿勢の崩れ・筋肉のアンバランスなどがあり、ストレッチやエクササイズで股関節の柔軟性を取り戻すことが改善の第一歩です。
ぜひ、動画を参考にご自宅で試してみてください。
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まずは体験から、専門家と二人三脚で一歩を踏み出してみませんか。